一言で歯周病といっても、学術的には様々な種類の歯周病があります。
そのうち多くの方が罹患する歯周病は「慢性歯周炎」と呼ばれる歯周病です。
慢性歯周炎の特徴としては、痛みがなく数年〜十数年かけて徐々に進行し、痛みや歯の動揺などの症状が出たときは骨が溶けるなどかなり歯周病が進行しているケースがほとんどです。
そうなる前に、痛みなどの症状がなくても定期的に来院していただき、歯石取りをしていただきたいのですが、ごく稀に「壊死性潰瘍性歯周炎」と呼ばれる歯周病を発症する方がいらっしゃいます。
この歯周病は歯肉の壊死と潰瘍形成を特徴とする疾患で、歯肉の出血や疼痛、発熱、リンパ節の腫脹、悪臭などを伴います。
発症原因として、不良な口腔衛生状態、ストレス、喫煙、免疫不全などが考えられます。
また、HIV感染患者の口腔内所見として見られることもある疾患です。
通常の「慢性歯周炎」の方は歯磨きして出血をすることはあっても、痛くて磨けないことはほとんどありません。
一方「壊死性潰瘍性歯周炎」を発症した方は歯ブラシが歯茎に当たると痛く、歯磨きすることも困難になってしまいます。
そのため、「2〜3日前から歯磨きができないほど歯茎全体が痛いです」といって来院されます。
ここで注意しなければならないのが、「壊死性潰瘍性歯周炎」は通常の「慢性歯周炎」とは歯周病菌の種類が違うということです。
一般の歯医者さんに行くと、おそらく通常の抗生物質を処方されますが、「壊死性潰瘍性歯周炎」は歯周病菌の種類が違うため、効果が薄くなってしまいます。
しかし当院は歯周病専門医が常勤しておりますので、このようなごく稀に起こる「壊死性潰瘍性歯周炎」にも効果のある抗生物質を直ちに処方することができます。
3日間歯磨きができず、来院された際も痛くて歯石取りができなかったため、薬の処方のみ行なった患者さんです。
薬を飲んでいただいただけですが、初診から3日後の来院時には痛みは完全になくなっていました。
この「壊死性潰瘍性歯周炎」は約10年間歯周病治療に携わってきた私でも今まで5ケースしか診たことがないごく稀なケースです。
しかし当院ではこのようなごく稀な疾患にも迅速に対応できる体制を整えておりますので、歯茎に異常を感じられた際はご連絡ください。